【獣医師が教える】歯石除去は動物病院で麻酔をかけて受けるべき理由

歯科疾患

こんにちは!院長です^^

今回のテーマは【歯石除去は動物病院で麻酔をかけて受けるべき理由】です。

この記事で分かること
  • 歯石除去の概要
  • 歯石除去をする際に麻酔をかける理由
  • 無麻酔歯石除去の悪い点

歯石除去について理解を深めていきましょう。

歯石をなぜ除去するのか

歯石は表面がデコボコして細菌が付着しやすい環境で、放置しておくと歯周病のリスクが高まるからです。

歯周病とは歯肉(歯の周りのピンク色の部分)や歯槽骨(歯の周囲にある骨のこと)等、歯の周囲に起きる病気の総称です。

歯垢(歯石になる前段階の汚れ)の中の細菌が出す毒素によって、歯肉に炎症が起きて腫れたり出血しやすくなります。

炎症が続くことで歯と歯肉の間に隙間ができる状態となり、細菌がさらに増殖しやすくなるため悪循環になります。

歯石はそういった歯垢や細菌の足場となりますので除去していく必要があります。

歯石除去の処置内容

  1. 麻酔薬を用いて全身麻酔をかけます。
  2. 必要であれば歯科レントゲンを撮影して歯周病の程度を評価します。
  3. プローブ(金属の細い棒)で歯周ポケットの深さを測定し、歯周病の病態度をグレード分類をします。
  4. 大きな歯石は超音波スケーラーという機械を用いて破砕します。他にもハンドスケーラーやキュレットといった専用の器具で細かな歯石を除去します。
  5. 研磨剤とブラシで研磨するポリッシングという処置を行います。

歯周病が進行していたり、その後の管理が困難な場合は抜歯を適宜行います。

麻酔をかけて歯石除去をする理由

麻酔をかけなければ正しい診断や適切な処置が行えないからです。

スケーラーが深く挿入できるような歯周ポケットの深い犬の場合は丁寧な処置が必要です。

(右写真は犬歯の歯周ポケットにスケーラーが深く刺さっている様子)

こういった症例では嫌がって動いたり、怒って噛みついてくる等の状況では適切な診断や処置は行えません。

無麻酔での歯石除去もパッと見はきれいになりますが、多くの場合で本質的な歯科治療には全くなりません。

無麻酔歯石除去の悪い点

  • 本質的な歯科治療にならない

適切に歯科処置を施そうと思うとある程度時間がかかる繊細な作業になります。

無麻酔歯石除去を見学したことはありませんが、歯科処置を麻酔のかかっていない嫌がる犬には絶対にできないと思いますので本質的な歯科治療にはならないと思われます。

  • 無麻酔での歯科処置は危険

日本小動物歯科研究会が無麻酔歯石除去を行った施設に対して、処置の結果どのようなアクシデントが起きたかをアンケート調査しております。

以下は歯科領域関連のアクシデント

  1. 歯周病が悪化した
  2. 処置後から犬が口周りを触らせなくなった
  3. 口腔内の損傷、出血
  4. 歯の破損、脱臼
  5. 顎の骨折

以下は歯科領域以外でのアクシデント

  1. 股関節脱臼、椎間板ヘルニアの発症
  2. 処置後に心不全症状が現れたり、腎機能が低下した
  3. 処置中、処置後翌日に死亡
  4. 誤嚥性肺炎
  5. 処置後に攻撃的な性格になった

推測するに、嫌がる犬を強く押さえつけて処置していることが原因でアクシデントが起きていると思われます。

(当院でも近隣のペットショップにて無麻酔歯石除去を受けた高齢犬が、その日から食欲不振になり腎不全を悪化させた事例がありました)

  • ペットショップやトリミング施設では獣医師が処置をしていない

一部の動物病院でも無麻酔歯石除去は行われているようですが、多くの場合はペットショップやトリミング施設などの動物病院以外での場所で行われています。

こういった施設では獣医師以外の方が施術をしていると思われますので、万が一アクシデントが起きた場合は対処できません。

獣医師による処置と、一般人による処置のどちらを受けさせたいかは明白です。

最後に

どうしても無麻酔歯石除去を希望される場合でも一度かかりつけ動物病院に相談してみてください。

担当の獣医師が歯石除去について丁寧に説明してくれると思いますので、そこでもう一度考えてみることを勧めます。

 

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