【獣医師が教える】子宮蓄膿症はどんな病気?

救急疾患

こんにちは!院長です^^

今回のテーマは【子宮蓄膿症はどんな病気?】です。

この記事で分かること
  • 子宮蓄膿症はどのような病気なのか
  • 子宮蓄膿症になった場合の治療法

メスのワンちゃんを飼っていらっしゃる飼い主様は是非読んでみてください。

子宮蓄膿症はどのような病気か

子宮内膜が細菌感染による炎症を起こして子宮内に膿性液が溜まってしまう病気です。

主な症状は以下の通りです。

  1. 元気食欲がなくなる(嘔吐下痢することもあり)
  2. 少し前から多飲多尿が認められる
  3. 陰部から膿のような液体が出ている

陰部から膿性液が排出されるパターンと排出されないパターンがありますので、膿が出ないから子宮蓄膿症ではないとは決められません。

一般的には中高齢の未避妊雌に起こる疾患で、発情出血から1~2か月後に発生しやすいです。(この年齢になるとはっきりした発情出血が分からないことも良くありますが)

日常の診療をしていると年に数回は子宮蓄膿症の症例に遭遇します。

 膿性液で腫れた子宮

基本的には外科手術で子宮卵巣を摘出することで完治が見込め、死亡率は0~5%程度と言われています。

しかし、

  1. 体温の異常
  2. 脈の異常
  3. 呼吸の異常
  4. 白血球の異常
  5. 血小板の異常
  6. 血糖値の異常
  7. 腎不全の併発

こういった条件になっている場合は著しく死亡率が上昇します。(死亡率20~57%)

子宮蓄膿症の治療法

  • 外科治療

おそらくいちばん多く選択される治療方法は外科手術で子宮卵巣を摘出する方法です。

手術内容は一般的な避妊手術とほぼ同様ですが、ワンちゃんのコンディションは一般的な避妊手術とは雲泥の差がありますので簡単なことではありません。

点滴や抗生剤などを使って可能な限りワンちゃんのコンディションを整えてから手術します。

前項で記載したような異常が少なければ多くの症例で速やかな回復が期待でき、再発リスクも抑えることができます。(必ず助かるわけではありませんが)

  • 内科治療

内科治療は主に以下の場合に選択される治療方法になります。

  1. 全身状態が非常に悪く、麻酔や手術自体に耐えら可能性が低い
  2. 飼い主が何らかの理由で手術を望まない

『アリジン』といわれるホルモン剤を注射して子宮の筋肉収縮と子宮頚管の弛緩を起こし、子宮内の膿性液の排出を促すことで治療します。

一般的に効果が見られるまでに1~2日かかり、3~5日程度で状態が改善することが多いです。

一方で以下のようなデメリットがありますので注意が必要です。

  1. お薬の効果の発現までに病状が悪化してしまう可能性がある
  2. 膿性液が排出できないパターンの時は若干効果が低い場合あり
  3. 子宮を摘出しないので再発リスクあり
  4. 子宮が残るからといってかならず妊娠できるわけではない

※前項で記載した異常を呈しているような状態では、内科治療であっても外科治療と同様に死亡してしまう危険性は高いので誤解のないようにお願い致します。

内科治療で改善したのちに再発防止目的で子宮卵巣摘出を実施するのも非常に良い治療法だと思います。

子宮蓄膿症を防ぐには?

シンプルですが事前に避妊手術を受けておくことです。

避妊手術を受ける年齢は関係ありませんので、すこし年齢を重ねていたとしても避妊手術を受けさせる意味はあります。

発情を起こさないようにホルモン剤を使用したり、発情期に予防的に抗菌薬を使用するなどの方法も一応考えられますが避妊手術が一番合理的でしょう。

残念ながら亡くなってしまった症例を何例も見てきましたので、繁殖を予定されないのであれば避妊手術を受けることを検討してみてください。

 

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