【獣医師が教える】猫の最新糖尿病治療薬2024『センベルゴ』

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こんにちは!院長です^^

今回のテーマは【猫の最新糖尿病治療薬2024『センベルゴ』】です。

この記事で分かること
  • 猫の糖尿病治療の新しい選択肢を知ることができる
  • 新しい薬の良い点と悪い点

ネコちゃんの新しい糖尿病治療薬『センベルゴ』のご紹介です。

猫の糖尿病はどんな病気?

糖尿病には1型糖尿病と2型糖尿病の2種類あります。

1型糖尿病は膵臓からインスリンが分泌されなくなることで起こりますので、治療にはインスリンが必要不可欠となります。

2型糖尿病は膵臓からインスリンの分泌が減少したり、インスリンの効きが悪くなったりすることで起こります。

猫は2型糖尿病に近いタイプと考えられています。

 

従来の猫の糖尿病治療法

今回の新薬の発売前時点では猫の糖尿病治療は『インスリン注射』しか選択肢がなく、飼い主様が自宅で1日2回インスリンを注射するしかありませんでした。

インスリン治療は非常に有効な治療法ですがいくつか問題点があります。

  1. 治療開始時にインスリン注射量が定まるまですこし時間を要する
  2. 注射を飼いネコにうたないといけないのが飼い主様のストレスになる
  3. 1日2回決まった時間に注射する必要があるため治療に生活リズムが縛られる
  4. インスリンが効きすぎて低血糖を起こす可能性がわずかながらある

とくに④は体調や食欲によってインスリンの効きが強まってしまい、低血糖を起こしてしまうと危険な状態になることもあります。

ですので厳密な血糖値コントロールを狙わずに、少し高血糖だけど多尿症状は起こらないぐらいの状態を目指して我々獣医師は治療を行います。

 猫に使用しているインスリン

新薬センベルゴの特徴

今回登場した『センベルゴ』は注射剤ではなく1日1回の飲み薬なのが大きな特徴です。

SGLT-2阻害剤と呼ばれるお薬の仲間(ヒト用のスーグラ、フォシーガなどと同様)で、尿中への糖排泄を促して血糖値を正常値に近づけることが目的のお薬です。

何らかの原因で高血糖状態が持続してしまうと膵臓β細胞からのインスリン分泌能力が低下してしまったり、インスリンの効果が低下してしまいます。

この現象を『糖毒性』と呼びますが、センベルゴは糖の排泄を促すことで血糖値を安定化させ糖毒性から脱却させるために使用します。

 

有効性は多くの猫ちゃんで認められており、おおよそ9割の猫ちゃんが糖尿病に関する症状(多尿、多飲、多食、体重減少)が改善するようです。

また、センベルゴは低血糖リスクが非常に低いのも特徴の一つでしょう。(インスリン治療も正しく管理すれば低血糖リスクは低いです)

全ての猫ちゃんに使えるのか

答えは『NO』です。

尿ケトン陽性』もしくは『高ケトン血症』の場合はセンベルゴでは治療することができません。

診断時点でいずれも陰性だったとしても、治療開始からしばらくするとどちらかが陽性になる場合もありますので2週間程度は数日おきの検査が必要になるでしょう。

また、過去にインスリン治療を受けたことがある猫ちゃんは受けたことがない猫ちゃんに比べてセンベルゴが向かない場合が多い傾向があるようです。

これはインスリン治療歴があるネコちゃんではセンベルゴでの治療中に上記の『尿ケトン』や『高ケトン血症』が発生する割合が多いとのデータがあるからのようです。

まとめますと

  1. 全ての猫ちゃんがセンベルゴで治療できるわけではない
  2. 治療開始できても途中でインスリン治療に変更せざるを得ない状況が発生することがある
  3. インスリン治療歴のあるネコちゃんはセンベルゴは向かない場合がある

これらは知っておいてください。

ちなみにですが、犬は1型糖尿病に近い病態ですのでセンベルゴでの治療は不可能でしょう。

まとめ

いかがでしょうか。

筆者はまだ使用したことはありませんが、注射が怖い飼い主の方や猫の性格上どうしても注射をすることができない場合などには有効な治療法となり得るかもしれません。

一方で『尿ケトン陽性』や『高ケトン血症』は放置しておくと非常に危険な状態に陥る場合がありますので十分に注意が必要です。

ネコちゃんの糖尿病治療の選択に役立ててみてください。

 

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